経営計画 事例紹介~その2~

 —————————————————————————————————————————–
 若女将はかねてより考えていた旅館再建に向けた秘策があった。
 
これまでの、一人でも多くのお客様にきていただき少しでも多くの売上を上げる考え方とは違う、客室の稼働を意思決定した。すなわち14室から11室への変更である。
 
もちろんお客様の受け皿が減るために、客数の減少に伴う売り上げ低下は避けられない。しかしこれまで以上のサービスの向上をしながらも、人員配置の見直しなどによる経費削減が可能となる。またエージェントに頼らない商売の確立ができれば、手数料や広告費の削減なども予想できる。
 
しかし、これまで経営者として全責任を背負って意思決定をしてきたわけではないため、自らの判断に確信がもてなかった。 また資金面においても、当初の返済を運転資金で借り換えるという悪循環に陥っていたことから、 金融機関からの借入金は20口以上で2億8千万円に達し、年間の元金返済額は6千5百万円にもなっていた。
 上記の状況に加え、日々の多忙に追われなかなか実行に踏み切れずにいた。

 折しも大女将(現社長)の高齢による若女将への経営継承の時期とも重なり、 これから否応なく若女将が全責任を負うところとなった。
 この機会にかねてより頭の中で描いていたものを整理し数値化することで、 実行可能であるかどうか検証する作業(=経営計画の策定)に入った。
 —————————————————————————————————————————–

 以下は、その際の改善ポイントである。

 Point① 売上計画
 
今案でのエージェントが販売している「1泊2食で○○円」とういう商品の従え方ではなく、 しっかりと売上分類(ルームチャージ料、料理代、宴会、飲料、売店…)し、稼働日数、 稼働率を月単位で詳細に算定、来館者予定人数×分類毎見込み単価等々の計画を立てる ことにより戦略を明確にしていった。

 Point② 売上原価(仕入)計画
 
売上分類に基づき原価の掛かるものと掛からないものとを明確にし、 料理長を交代し料理原価をしっかり管理させることにより、原価率(6%)の減少が図れた。

 Point③ 人件費計画
 
売上計画に伴う人員配置(14室稼働から11室稼働)を見直すことにより、 売上高は減少したが大幅な人件費の削減が出来た(約3千円)。

 Point④ 経費計画
 エージェントとの契約を打ち切ることにより売上高は減少したが、販売費(手数料、広告宣伝費)の減少、 空調設備の見直しによるコストダウン、費目毎の詳細な見直しにより経費の大幅な削減が出来た(約5千円)。

 Point⑤ 投資及び資金等計画
 
建築当初から10年以上経過しているが、必要最小限の設備投資しとどめ、 20口以上あった金融機関からの借入金の整理(金利交渉、長期資金への借り換え)をし、 金融機関とねばり強い交渉を続け金利を下げながら、年間元金返済額を4千万円まで圧縮することが出来た。

 Point⑥ 番外編
 これまで年に3~4回しか月次決算が出来ていなかったが、これを機に月次決算制度を確立し、 毎月10日までには、試算表の確認をするようになった。毎月の計画と実績の対比は課題を浮き彫りにし、 課題に対して早めに手がうてるようになった。

経営計画の概要とそのポイント


今後の展望

 経営計画の立案と毎月の予実管理を開始してから3年が経過しようとしている。
 
上記の通り業績は順調に推移してはいるものの、資金繰りはまだまだ予断を許さない状態である。過去の荷物を背負いながら次世代へと繋げるために新しい形の温泉旅館を模索中であり、既に中期計画は出来上がっている。

若女将は今回の経営計画立案の体験を通じ、経営とは、「仮設⇒実践⇒検証」の繰り返しではないかと感じるようになった。自らの新しい考え(仮説)が実践可能かどうかを判断するために経営計画を作成し、それを絵に描いた餅で終わらせることなく実践し、 毎月の予実管理を通じて検証する。そして課題(新しい仮説)を解決していくことにより成長発展を目指している。
 そしていま、新しい仮設(スパ温泉旅館)もまた動き出した。

投稿者:yamamura