企業価値評価・基礎知識

企業価値と事業価値の違い

事業価値とは、事業から創出される価値です。事業価値は事業用資産から生み出されますが、企業には非事業用資産も存在し(その典型例は遊休不動産)、こちらは事業価値には含まれません。一方、企業価値には非事業用資産の価値も含まれますので、事業価値に非事業用資産の売却価値を加算したものが企業価値になります。

シナジー効果(相乗効果)の評価

企業価値評価ガイドラインは、「シナジー効果(相乗効果)とは、2つ以上の企業ないし事業が統合して運営される場合の価値が、それぞれの企業ないし事業を単独で運営するよりも大きくなる効果」と定義しています。
例えば、販売チャネルの共有や他方のブランド活用による売上アップ、拠点統合や購買力増強にによるコストダウン等が上げられます。
企業価値評価額は大きく増減する非常に重要な項目といえますが、過去のM&A事例では想定したほどのシナジー効果が働かないケースが多く、慎重な評価が必要となります。

企業価値評価手法(1)

評価手法は、一般的に、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分類されます。
インカム・アプローチは、評価対象会社から期待される利益ないしキャッシュ・フローに基づいて価値を評価する方法であり、将来の収益獲得能力を価値に反映させるアプローチです。
マーケット・アプローチは、上場している同業他社の株価や類似取引事例価格など、類似する会社、事業、取引事例等の価格と経営指標とを比較することによって相対的に価値を評価するアプローチです。
ネットアセット・アプローチは、主として会社の貸借対照表上の純資産に注目したアプローチです。

企業価値評価手法(2)

インカム・アプローチは、評価対象会社独自の収益性等をもとに価値を測定することから評価対象会社がもつ固有の価値を示すメリットがありますが、事業計画等の将来情報に対する恣意性の排除が難しいことも多く、客観性が問題になるケースもあります。
マーケット・アプローチは、客観性には優れているが、類似企業とは異なる成長ステージにある等、経営環境に大きな違いがある場合にはその評価結果の信頼性が問題となります。また、評価対象会社がもつ固有の性質を反映させていない等のデメリットもあります。
ネットアセット・アプローチは、のれん等が適正に計上されている場合には、将来の収益能力が反映され継続企業としての評価となりますが、そうでない場合には継続企業としての適正な評価となりません。

ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法

将来のフリー・キャッシュ・フローの期待値を加重平均資本コストで割り引いた現在価値に基づき事業価値を評価する方式であり、インカムアプローチの中で最も広く利用されています。

モンテカルロDCF法

DCF法の一種であり、将来の業績に影響を与える変数が一定の確率分布に従い変動するものとみなして、乱数によるシミュレーション結果から事業価値の期待値を算定する方式であり、事業計画に不確定要素が含まれる場合に適しています。

リアルオプション法

事業価値に影響を及ぼす意思決定をオプションの一種としてとらえ、オプション価格理論に基づき事業価値を評価する方式であり、将来の不確実性や経営者の意思決定の柔軟性を反映させるのに適しています。

企業価値の3つのアプローチの使い分け

増資や株式譲渡など企業価値の評価を必要とする取引の大半は、企業の将来の収益力に着目して行われるのが一般的です。そのため、取引目的による企業価値評価の手法としては、企業の収益力を評価するインカム・アプローチが最も適合していると言えます。
マーケット・アプローチは。市場や第三者間において成立する価格をもとに企業価値を評価するという点で、企業の収益力を間接的に反映しており、インカム・アプローチを補完する役割を果たします。
コスト・アプローチは、清算を予定している企業の評価など限定的な場合に適合します。

DCF法で利用する事業計画の期間

実務上は5年以内の中期事業計画に依存することが多いものの、それ以降も高い成長性が見込める等の場合には、さらに長い期間の予測を行い、それ以降を継続価値として見積ることが望ましいと言えます。ここで継続価値とは、予測期間以降のフリー・キャッシュ・フローを予測期間終了時点における価値に換算したものです。

DCF法で利用する事業計画の形式

事業計画としては、予想損益計算書、予想貸借対照表及び設備計画を準備する必要がありますが、実務上は予想貸借対照表を作成せず、各事業年度の運転資金増減を直接見積ることのみで対応することが多いです。

フリー・キャッシュ・フローの算定

フリー・キャッシュ・フローとは、企業の事業活動を通じて獲得され、全ての資本提供者(株主及び債権者)に分配し得るキャッシュ・フローをいいます。
フリー・キャッシュ・フローは、利払前税引前利益(EBIT)から対応する税金を控除し、減価償却費などの非資金損益項目を加算し、設備投資や運転資金の増減など、損益計算の対象とならない事業用資産の増減を調整することにより算定されます。

割引率

将来受け取るキャッシュ・フローを現在価値に割り引くときの割合の年率です。割引率はキャッシュ・フローのリスクに応じて決定され、企業価値をDCF法で算出するときの割引率は資本コストと呼ばれ、WACC(加重平均資本コスト)を用います。

投稿者:yamamura

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